核となる人物の相手でありたい。自分の価値を提供する場はどこに隠れているかわからない。
友人のレストランにご飯を食べに行った。
レストランに入るなり見覚えのある人達が『遊び場』を縦横無尽に駆け回る姿が見えた。
もうその時点で、今日は波乱の予感しかしなかった。
今回は3家族での合同お食事会で、我が家以外の2家族には『男の子』という存在がいた。
我が家の娘たちは大人しいことに定評があり、『空気をヨム』ことを得意としていた。
しかし、男の子は違う!ここぞとばかりに己のもてる力を思う存分に発揮し、全力で暴れまわる。
その姿は私が日頃走る姿と重なり、あまり声を大にして注意する自信はなかった。
食事をせずに『遊び場』で本領を発揮する子どもたちを見兼ねた友人の料理長が、
『食べようか!』
という声と共に会は始まりを告げる。
最初は子どもビールで乾杯をして、最高の雰囲気がながれた。
そんな一時はつかの間、飲み物を一瞬にして飲み干し、席を離れ、遊びを再開した。
その後も料理が出てくる→少し食べる→遊び場で暴れるのリピートを繰り返した。
周りのお客様も子ども連れとはいえ、とても静かに料理をたしなんでいる。
お金持ちそうな方々の視線が気になり始めた。
レストランが人生2度目の未熟者とはいえ、料理長が友人とはいえ、
このままではいけない。
私は本気を出すことを決意した。
先ずこの『遊び場』を牛耳っているのは何を隠そう、友人の料理長の息子である。
この子を説得すれば、穏やかな時間が過ごせる。
そう確信した私は料理長の息子に話しかけた。
完全にシカトされる。
この行為に対して、完全にスイッチが入ってしまった。
カチッ。
この子と今日中に『約束ができる関係』を築いてやる。
そこからは、強引な作戦であったが、私の左腕だけで行動してもらうことにした。
私の頭で考えられる短時間で決着をつける作戦はこれしかなかった。
私の左腕で跳ねたり、回転したり、上下左右に行動し続ける。
『遊びたいよーおりたいよー』と発言し続ける。
声が大きくなれば個室へ移動し、約束を交わし、席へ戻る。
という攻防を続けること早30分。相手はかなりの消耗をしていた。
私の左腕もパンパンになり、限界に近づいていた。
服装も薄手のシャツ一枚に。
時間を忘れて戦っていると、もうデザートが出てきていた。
その頃には、料理長の息子も大人しくなり、ケーキのトッピングを楽しむことができるまでになっていた。
もちろんもう一人のキャプテンの息子も自然と落ち着いていた。
子どもとレストランに行くこと=左腕のトレーニングをしにいく。と言っても過言ではない。
この経験は『男の子』と食事に行くことがどれだけリスクある行為であり、覚悟が必要なことかを学ばせてくれた。
それと引き換えに、『鶏食うのうまいな』+『粘り強いね』というありがたいお言葉も頂いた。
料理長の息子との時間と引き換えに、『少しだけ平穏な食事ができる空間』という場を提供できた気がした。
仲間と時間を共有する中で、自分がどんな『価値提供』をするか?ということはその時々で考えるべきことで、
今回はシンプルに料理を食している場合ではない会合であったことは間違いない。
言うまでもなく、終始大人しい娘との時間など、どこ吹く風である。
また、その空間でベストを尽せたか?毎回チェックすることも大切である。
もちろん!料理は最高においしく、高級なものを食べるとお腹の調子を悪くする私もかなりの量を食したが、スッキリ食べることができた。
ちなみにキャプテンも同じ体質らしく、残念ながらいつも通りお腹が痛くなってしまった様子であった。
いつなんどきも安定感のある『地産地消』を実行している人間が、こんなに身近に存在していることに驚きを隠せない休日であった。